安全の船・安全の海をもとめて

「東アジア地域における海上安全と事故調査のためのセミナー」開催

  財団法人海難審判協会は、平成221129日(月)から123日(金)までの5日間、東アジア各国・地域の事故調査官35名が参加し、英国クランフィールド大学から事故調査の専門家を講師として招き、「東アジア地域における海上安全と事故調査のためのセミナー」を開催しました。

 船舶事故調査をめぐっては、20085月、国際海事機関(IMO)第84回海上安全委員会(MSC84)において、「海上事故又はインシデントの安全調査のための国際基準及び勧告される方式に関するコード」が採択されるとともに、SOLAS条約第XI−1章第6規則が追加され、昨年の201011日に発効したことによって、事故要因やその他の安全上のリスクを明らかにし、海事業界における安全上の問題への取組みに資するなどの原因究明機能が国際的に求められるようになりました。

また、IMO義務要件実施のためのコードでは、旗国の行う海上事故調査は、適した資格を有し、船舶事故に関連する事項に堪能な調査官により行うべきである。旗国は海上事故又は海上インシデントの場所に関わらず、この目的のために資格ある調査官を準備すべきであるとしています。

 このセミナーは、このような状況下、東アジア海域で重大かつ深刻な船舶事故が発生する現状に鑑み、この地域の船舶事故調査官を我が国に招請し、これに我が国の船舶事故調査官が参加することで、事故調査に係る知識の向上と併せて国際協力の促進を図ることを目的とし、日本財団の助成金を受けて開催したものです。                                                                                                   

 セミナーカリキュラムは、1129日から122日までの4日間のショートプログラムコースで、事故調査プロセス全般、事故の通知、初期対応、証拠の確認と収集、ヒューマンパフォーマンス、分析テクニック、レポート作成技術指導及び船舶事故のケーススタディ等を使用しての実践学習が行われました。

 また、セミナー最終日の3日午前中には、東アジア各国・地域の船舶事故調査官等により船舶事故調査等の現状等についてディスカッションが行われ、午後からは、株式会社 エム・オー・エル・マリンコンサルティング(港区)において、コンテナ船による沿岸航行中の操船(研修生が操船)等、シミュレータ設備の視察・研修を実施しました。

 今回、本セミナーの開催により、IMOコードに基づく船舶事故調査方法のブラッシュアップで事故調査に係る技能を向上させ、あわせて東アジア諸国相互で国際的な調査協力の促進をはかり、今後の国際的な調査に役立てることができたものと思っています。

 本セミナーの開催にあたり、多大なるご支援を頂いた日本財団、及びご指導・ご協力を頂いた運輸安全委員会・海難審判所の関係各位に厚くお礼申し上げます。 

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 なお、セミナー報告書は、海難防止のためのブログ[http://blog.canpan.info/maia-fn/]に掲載しています。  

 

 

アジア地域における海難調査協力体制の構築に関する調査研究について

 

 財団法人海難審判協会は、平成19年度及び20年度の2か年度にわたり、日本財団の助成事業として、「アジア地域における海難調査協力体制の構築に関する調査研究」を行いました。
 この調査研究の概要について、ご紹介します。
                

1 調査研究の目的
 平成20年(2008年)5月開催のIMO第84回海上安全委員会(MSC84)において、「海上事故又は海上インシデントの安全調査のための国際基準及び勧告される方式に関するコード(以下「事故調査コード」という。)」が採択され、それとともに、一部改正されたSOLAS条約が、同22年(2010年)1月に発効し、事故調査コードの一部が強制化されることとなっています。
  こういう中で、我が国が位置するアジア地域における海難調査に係る状況を概観すると、同地域においては、その制度自体はもとより、海難調査手法等の様々な面で、なお発展の過程にあり、各国間の海難調査協力についても、限定された範囲のものにとどまっている状況にあります。
 以上のことを踏まえ、当協会は、本調査研究を行い、アジア地域に事故調査コードに沿った海難調査及び海難防止策を浸透させるとともに、海難調査協力体制の構築を図り、この地域の海難防止と海上交通の安全に資することとしました。
  
2 調査研究の概要
  この調査研究は、平成19年度と同20年度の2か年度にわたり、海難調査及び行政問題に通暁している学識経験者、海事関係専門家及び海難審判庁担当官(注:海難審判庁は、平成20年10月1日付けで、運輸安全委員会と海難審判所に組織変更されました。)により構成する「アジア地域における海難調査協力体制の構築に関する調査研究委員会(以下「調査研究委員会」という。)」を設置して行い、その一環として、同20年6月25日~26日には、東京において、アジア及び太平洋地域の15か国・地域の海難調査官及び国際海難調査官会議(MAIIF)議長を招請して、「アジア地域における海難調査協力推進のための専門家会議」を開催しました。
 
    「アジア地域における海難調査協力体制の構築に関する調査研究委員会」名簿
                                  (順不同、敬称略)
   委員長  加藤俊平  東京理科大学 名誉教授
   委 員  重田晴生  青山学院大学大学院 教授
   委 員  松原昭一  日本水先人会連合会 専務理事
   委 員  田村兼吉  独立行政法人海上技術安全研究所 運航・システム部門長
   委 員  大須賀英郎  高等海難審判庁 首席審判官
   委 員  菅井雅昭  高等海難審判庁 総務課長
       (前任者 河田守弘)
   委 員  柴田 聡  高等海難審判庁 国際業務調整官
   委 員  古城達也  海難審判理事所 国際業務室長
       (前任者 阿部房雄) 
    
平成19年度における調査研究
 海難調査の成果物である海難調査報告書等について、特に海運及び海難調査の先進国である欧米諸国の海難調査報告書及び国際的な海難調査協力の状況を中心に調査研究を行いました。
 調査研究の結果については、「アジア地域における海難調査協力体制の構築に関する調査研究中間報告書」として取りまとめ、海難防止に資するため、海事関係官庁及び海事関係団体等に配付、周知しました。
  
平成20年度における調査研究
 アジア地域及び特別参加の太平洋地域の15か国(地域)の海難調査官及び国際海難調査官会議(MAIIF)議長の総数20名を招請し、同20年6月25日~26日に、東京都品川区にある「船の科学館」において、「アジア地域における海難調査協力推進のための専門家会議」を開催し、各国の海難調査制度や海難調査事例についてのプレゼンテーション及びこれらについての審議を行うとともに、会議の成果を総括するSUMMARYを採択しました。

 

【アジア地域における海難調査協力推進のための専門家会議の参加国等】
 インド、インドネシア、韓国、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、ベトナム、香港中国、マレーシア、ミャンマー、モンゴル、ロシア、米国、オーストラリアの15か国・地域の海難調査官、国際海難調査官会議(MAIIF)議長及び日本(海難審判庁)

 

  以上の2か年度にわたる調査研究結果については、「アジア地域における海難調査協力体制の構築に関する調査研究報告書」(2分冊)として取りまとめ、海難防止に資するため、海事関係官庁及び海事関係団体等に配付するとともに、分冊・その2(上記記専門家会議の概要を掲載)については、英文要約版を作成し、前述の専門家会議の参加国、IMO及び他の海運国等に配付、周知しました。
 なお、「アジア地域における海難調査協力体制の構築に関する調査研究報告書」(2分冊)については、
  財団法人海難審判協会の「海難防止のためのブログ」
         http://blog.canpan.info/maia-fn/     
   に掲載しております。


 

IMOコード条約化への対応に関する研究事業

財団法人海難審判協会では、平成17年度及び18年度の2か年度にわたり、日本財団の助成事業として、「IMOコード条約化への対応に関する調査研究」を行い、このほど、その調査研究報告書をとりまとめました。この調査研究の概要について、ご紹介いたします。

IMOコードとその条約化の動き

本調査研究のいう「IMOコード」とは、国際海事機関(IMO)総会において、平成9年(1997年)11月27日に採択されたIMO決議A.849(20)「海難及び海上インシデントの調査のためのコ−ド」のことです。IMOコードは、海難及び海上インシデントの調査のための標準的手法と国際的な調査協力の枠組みの確立を目指して決議されたものですが、採択後、その実効性を高め、かつ、海難調査に係る国際協力を促進するため、IMO海上安全委員会(MSC)において、また、同委員会及び海洋環境保護委員会(MEPC)の下部機関である旗国小委員会(FSI)に設置されたコレスポンデンスグループにおいて、同コードに係る諸問題が検討されてきました。IMOコードは、その後、平成11年(1999年)11月25日に決議A.884(21)「海難及び海上インシデントの調査のためのコ−ド(決議 A.849(20))の改正」が採択され、その付属書に、当初から含まれていた付録「コード実施における調査官を補佐するための指針」(「付録1」に改正)に加えて、付録2として「海難及び海上インシデントにおけるヒューマンファクターの調査のための指針」が追加されています。そういう中で、平成16年(2004年)9月及び12月、IMO第52回海洋環境保護委員会(MEPC52)及び第79回海上安全委員会(MSC79)において、オーストラリア、カナダ及びバヌアツの3国から、同コードは採択からすでに6年有余を経過していること、欧州共同体(EU)では同コードが標準として採用されていることなどの現状に照らし、受け入れ可能な状況になったとし、必要な修正を加え、海上人命安全条約(SOLAS条約)の付属書として条約化すべきであるとの趣旨の共同提案がなされました。しかしながら、現行の条約との整合性をとる必要があることや各国の調査体制に大きな差異があることなどから、まず、現コードの見直し作業を行い、それが完了した後、条約化の議論を行うことになり、平成19年(2007年)6月の第15回旗国小委員会での完成を目標に、同作業が進められてきました。

本調査研究の実施

上記を踏まえ、本協会は、海難調査の主管庁である海難審判庁の指導のもとで、海運先進各国の海難調査制度及び同コードへの対応状況等を把握するため、実地調査を実施し、同コードの条約化への動きに対し、我が国としていかに対応すべきかの参考に資するための調査研究を行うこととしました。
この調査研究は、平成17年度及び18年度の2か年計画で、学識経験者及び海難審判庁担当者により構成する「IMOコード条約化への対応に関する調査研究会」を設置して行いました。

委員長 加藤 俊平 東京理科大学 名誉教授
委員 重田 晴生 青山学院大学大学院 教授
櫻井 美奈 株式会社日本海洋科学 研究員
大須賀 英郎 高等海難審判庁首席審判官
河田 守弘 高等海難審判庁総務課長
松浦 数雄 高等海難審判庁国際業務調整官
阿部 房雄
(伊東 由人)
海難審判理事所国際業務室長
事務局
(財)海難審判協会
小西 二夫 (財)海難審判協会理事長
飯田 朝明 (財)海難審判協会研究部長
(注)順不同、敬称略
(  )は、前任者
 
 
 
 

海難審判裁決先例の調査研究

内航船海難の調査研究について

財団法人海難審判協会では、自主事業として継続実施している海難審判裁決先例研究について、平成19年度~20年度においては、内航船の海難を対象に調査研究を行いました。  
国際海事機関(IMO)は、海上交通の安全と海洋環境の保全は、海難の原因を深く多角的に、また、国際的協力の下に究明することによって促進されるとし、海難を関係各国の国際協力のもと、ヒューマンファクター概念に基づいて調査し、その分析結果を海難防止施策に活用することを奨励しています。
また、海難は、多種多様な船舶が、広狭深浅な様々な水域において、各種各様の業務に従事しているときに発生することから、全船舶に敷衍的な海難防止策を見出し難いこともあって、船種別、事故種類別に海難原因を摘示し、海難防止策を提示するのが最も効果的、効率的、経済的であると考えられています。 
ところで、海難審判庁が調査を行った海難のうち、内航船に係わる海難事故は、内航船の概念をどうとらえるかにもよりますが、全海難の概ね20%を占めている状況にあるとみられます。
そこで、本先例研究においては、上記のことを踏まえ、海難審判庁の裁決をもとに、特に内航船に多発している衝突事件に絞って調査、分析し、衝突の原因とその対策を摘出することとしました。
なお、本先例研究は、下記名簿の委員により構成する「海難審判裁決先例研究会」を設置して行いました。 
同研究会の研究結果は、当協会機関紙「海難と審判」及びこのホームページに順次掲載しますので、内航船海難の防止のため、ご活用いただければ幸いです。 

 
「海難審判裁決先例研究会」 委員
委員長 佐藤 修臣 東京商船大学名誉教授
委員 小竹 勇 元海難審判理事所長(平成19年度)
小西 二夫 元高等海難裁判庁長官(平成20年度)
田川 俊一 海事補佐人・弁護士
武田 誠一 国立大学法人東京海洋大学海洋科学部教授
福田 身延 (社)日本船長協会常務理事
黒田 均 高等海難審判庁 審判官(平成19年度)
加藤 昌平

高等海難審判庁 審判官平成20年度)
(海難審判所 審判官・平成20年10月官職名変更)

織戸 孝治 海難審判理事所 理事官(平成19年度)
西村 敏和 海難審判理事所 理事官(平成20年度・20年9月まで)
横須賀勇一 海難審判所理事官(平成20年10月から)
(注)順不同、敬称略
内航船海難の調査研究の結果は、以下のとおりとなっています。
  •  第1例 貨物船甲丸漁船乙丸引船列衝突事件
  •  第2例 油送船甲丸貨物船乙丸衝突事件
  •  第3例 貨物船甲丸押船乙丸被押バージ丙丸衝突事件
  •  第4例 貨物船甲丸漁船乙丸衝突事件
  •  

    内航船海難の調査研究の前に行った、漁船海難に係る調査研究の結果は、以下のとおりとなっています。